最高の一夜 サイトウ・キネン・フェスティバル 松本

サイトウ・キネン1

 圧倒されました。全員が、その存在感をいっぱいに発揮した演奏でした。 
 ことばはなく、ただ拍手しました。スタンディング・オーべーションです。思わず立ち上がって、大きく手を打ちました。シャッターを押すことも忘れませんでしたが、「写真禁止」と制止する係員の目を盗んだ1枚です。
 右から5人目くらいで左上を見ているのが小沢征爾です。一人おいた隣がヴァイオリンの潮田益子です。
 すごい!! それが感想のすべてです。

サイトウ・キネン2

 Saito Kinen Festival Matsumoto が開かれた長野・松本市の県松本文化会館です。
 駐車場にクルマをとめましたが、意外なほどに「松本」ナンバーが多く、県外、まして「大阪」にはでくわしませんでした。

サイトウ・キネン3

 右が公式パンフレット(2,000円)です。その上が2人分のチケット(奮発したS席は、1枚21,000円)。左は、15周年の歩みを伝えるチラシです。
 9月11日の演奏会は「Bプログラム」でした。
 ホールにはいると、でハープ奏者が音合わせをしていました。吉野直子です。まだ始まっていないのに、緊張感が漂います。
 武満徹:ディスタンス
 宮田まゆみの笙とオーボエが、不思議な時間を刻みます。リズムも拍もない。もちろん、初めて聞きました。息をつめて聞きました。
 ベートーベン:ピアノ協奏曲 第5番 変ホ長調 作品73「皇帝」
 オケが入ってきます。先頭は、クラリネットを手にしたカール・ライスターです。元ベルリン・フィルの首席奏者です。モーツァルトのクラリネット協奏曲のCDは大好きです。ああ、あの人…と、テレビのサイトウ・キネンの映像などで見た顔が並びます。コンサート・マスターは潮田益子でした。
 内田光子と小澤の登場です。ものすごい拍手です。
 ピアノが鳴り響きます。あんなに細い体で、どこからあんなパワーがでるのかという音です。出だしにちょっと音をはずしましたが、そんなことは関係ない。ただ、すごい。グイグイと引き込まれました。
 「あれだけバンバン弾いているようで、指はずーっと鍵盤から離れていない。タッチが滑らかで、フォルテになっても音が荒れないし、弱音は澄み切っている。モーションは激しいけれど…」とは、ピアノがわかる女房の感想です。
 ショスタコーヴィチ:交響曲第5番 ニ短調 作品47
 かつては社会主義的リアリズムの忠実な作品とみなされていました。近年はショスタコーヴィッチが、旧ソ連の体制に批判的な姿勢をもていたことも明らかになっています。
 そんなことより、テレビ創世時代にABCテレビが「部長刑事」という番組を放映していました。そのタイトルバックに流れていた、あの印象的な旋律で耳に残っています。ショスタコーヴィチの生誕100年ということで、登場したようです。
 それにしても、小澤らしい選曲で、これでもか、これでもかといわんばかりに楽しませてくれた。第1楽章の圧倒的な盛り上がりでは、このところ耳が不調な女房がまた「聞こえなくなった」と言い出すのではと心配になるほどの大迫力だでした。コンマス・矢部達哉のヴァイオリンが弱音を綴り、吉野のハープが響き、工藤重典のフルートが歌います。管楽器は、残念ながらだれが吹いているのかよく見えませんでいたが、これまたヴィルトーゾがソロのオンパレードを聞かせてくれました。

サイトウ・キネン4

 松本市は、サイトウ・キネン一色だでした。
 「あがたの森」にはためくシンボル旗です。ここは、旧制松本高校(北杜夫らの母校)の校舎が保存された公園になっています。

サイトウ・キネン5

 中町商店街にある松本民芸家具の中央民芸ショールームです。そのドアには、サイトウ・キネンの小さな旗が。おなじ旗をあちこちで目にしました。
 演奏会後に食事に入った飲み屋のおばちゃんまでが、「サイトウの帰りですか?」と聞いてくれます。

サイトウ・キネン6

 会場の松本文化会館の前にあるデコレーションです。

サイトウ・キネン7

 あまり広くないロビーです。ここでは、ワインがサービスされていました。無料です。
 わたしは、入場したときに「白」を。休憩時間に「赤」をありがたくいただきました。

サイトウ・キネン9

 休憩中のホールです。わたしたちの席は前から7列目のちょっと左寄りです。
 「前すぎて、これではオーケストラの響きが聴けないね」とは演奏が始まる前。いざ、始まると、目の前で繰り広げられる大迫力に圧倒されました。内田のピアノは、鍵盤を動く指がよく見えます。小澤の息づかいまでが伝わってくるようです。

サイトウ・キネン8

 宿泊した松本ホテル花月は、オーケストラ団員の宿泊地の一つになっていました。ロビーには、この日の予定が掲示されていました。
 サイトウ・キネン・フェスティバルは、12日が最終日です。この日の予定には、お別れパーティーの後に、成田空港に直行するバスの予定も書かれていました。
 夏休みをここまで遅くして、はるばるやって来たかいがありました。また同じ体験をした。素晴らしい音楽を浴びた一夜でした。

「最高の一夜 サイトウ・キネン・フェスティバル 松本」への3件のフィードバック

  1.  サイトウキネンは、初日のふれあいコンサートを小澤と一緒に(のホールで)聴きましたが、町の盛り上がりがなんとも言えません。ボランティアもたくさんおられたようですね。オーケストラの様子を知りまして、来年は何とかチケットを入手する方法を考えたいと思います。こんなに音楽会で盛り上がるなんて、びわ湖ホールのオペラでもないですね。
     素敵な情報ありがとうございました。
     なお、松本のしゃれたフランス料理店は、「鯛萬」(たいまん)とのことでしたので、来年はここにも行きたいです。外側からは見てきました。

  2. ザルツグルクで堪能されて、今度はマツモトでしたね。このところ、たいへん羨ましい限りです。マツモトは何度か挑戦していますが、あの午前10時を期しての申し込みは誰かと組んでやらないと、とてもだめです。3、4年前にカルメンの出演募集があって、聴かせる側に回ってやろうと、応募要項を見ましたら、長野県在住であることと、毎回の練習に必ず参加できることが条件になっていて諦めたことがありました。
    潮田益子は懐かしいですね。もう還暦過ぎてるのではないでしょうか。もう、何十年も昔になりますが、彼女が音コンで1位になった披露演奏会でメンデルスゾーンでしたが、演奏中に弦が切れて、すぐコンマスのヴァイオリンを取って、追いかけて曲に入ったことがありました。ポジションが合わないので、音は少し狂っていたのは仕方ありませんが、駆け出しの若さでその素早い落ち着いた動作には驚かされたものです。
    マツモトキネンは世界中に散っている斉藤門下と桐朋の同窓仲間が年に一度集まるユニークなフェスティバルとはいえ、著名な音楽家たちを一同に見たり聴いたり出来るのはすごいですし、一度は行ってみたいですね。

  3. いつも、友人と話す時にマツモトと言っていましたので、そう書いてしまいましたが、正しくはサイトウキネンでしたね。
    ところで、愛車はどうされたのでしょうか。

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