京城勝覧を巡る 第七日 愛宕山鉄道の廃線跡と大河内山荘

 貝原益軒の記す京ガイド「京城勝覧」の第七日は、『嵯峨にゆく道』です。これまでになく多くの名所旧跡が網羅されています。『上下の嵯峨見所多し朝ははやく出べし』の注意書きもあります。
 わたしは最初に、益軒さんの時代には存在しなかった愛宕山鉄道の廃線跡をたどりました。
 愛宕山に登る参拝者を運ぶため嵐山駅から清滝駅までの普通鉄道路線(平坦線)と、清滝川駅から愛宕駅までのケーブルカー(鋼索鉄道)が、昭和4(1929)年に開設されました。しかし、戦時中にレールを軍に供出して、わずか15年で廃線となりました。
 その遺構は多くはありません。最大のものが、今も清滝につながる幹線道路として使われている清滝トンネルです。単線の鉄道トンネルとして開通しました。その途中には、架線柱の残骸が朽ちて残っていました。

 『野ノ宮(野々宮)』の辺りの竹林です。まだまだ観光客は少なく、静かでした。

 「大河内山荘」に初めて入りました。時代劇映画の大スター、大河内伝次郎が30年の歳月をかけて作り上げた回遊式の借景庭園です。これほど素晴らしい庭園とは知りませんでした。

 【2021/10/05 11:31】
 天気が良いからと、急に思い立って出てきました。
 阪急桂で乗り換えて、嵐山までやって来ました。ちょっと遅いスタートです。

 渡月橋にもぼつぼつと人出が戻ってきていました。

 嵐電嵐山です。「キモノフォレスト」という友禅のポールの左側に愛宕山鉄道のホームがあったのです。

 「大人の京都探訪」(リーフ・ムック)に「昭和初期の愛宕山鉄道」という京都市都市基本図(昭和10年)の一部が掲載されています。これを読んで、歩きたくなったのです。
 愛宕山に登るケーブルカーの廃線跡は、「愛宕山 ケーブル廃線跡を直登する」として2年ほど前に仲間と歩いています。

 愛宕山鉄道は、ここから出発したのです。

 すぐに、現在は高架自動車道が頭上を走る道に左折します。

 歩道橋と同じように、JR嵯峨野線を跨ぐ築堤と鉄橋があったようです。

 下りの電車が走り去りました。

 しばらく歩くと大覚寺を経由するバスが右折する交差点があります。この辺りに釈迦堂駅がありました。

 すぐ西に広い『清涼寺(嵯峨釈迦堂)』があります。

 なおも歩くと、右上に京都五山送り火の鳥居形の火床があります。それほど高い山ではありません。3月に登ったばかりです。

 道路に沿った擁壁は、愛宕山鉄道の遺構なのでしょう。

 きょうの京都は30度を超える真夏日だったようです。汗を流しながら歩きました。

 左下に愛宕街道が見えます。
 鳥居本の朱の一の鳥居と、鮎茶屋の平野屋が見えました。

 ここにも架線柱の基部が残っています。

 鉄道廃止から77年の歳月が流れています。

 愛宕(おたぎ)念仏寺を横目にします。境内には参拝者の手によって彫られた1200躰のいろんな表情、ポーズの石造の羅漢さんが並んでいます。

 清滝トンネルのポータル(坑口)は、きわめてシンプルです。扁額もありません。当時のままなんでしょう。

 小学生だったときに、先生に連れられて清滝まで遊びに行ったことがあります。そのときのこのトンネルを抜けました。
 きょうは奥さまと2人です。対向車に気づいてもらうよう、ヘッドランプを点滅させて歩きました。

 退避壕が2か所ほどありました。列車が通過するときには、逃げ込む場所が必要だったのでしょう。

 無事、通り抜けました。

 【12:51】
 清滝です。京都バスの発着場となっている平坦地に、愛宕山鉄道の清滝駅がありました。

 敷地の端に、レールを細工した柵が残っていました。これも遺構なんでしょうか。

 阪急嵐山行の京都バスはすぐに発車しました。茶屋も閉まっていたので、慌てて飛び乗りました。

 バスは、あっという間にトンネルを抜けました。

 嵯峨小学校前でバスを降りました。目の前が昼ご飯を食べようと思っていた食堂でした。ところが昼営業は、あす6日からでした。

 【13:16】
 天龍寺前のそば屋で昼飯を食べて、もう少し歩くことにしました。

 野々宮に通じる竹林の小径です。観光客は多くありません。

 野々宮に参りました。
 修学旅行の中学生がいました。おみくじをひいて、「これで合格や!」と明るい声をあげてました。

 大河内山荘です。

 入山料1000円(抹茶、菓子付き)にちょっとひるみましたが、入ることに。

 いただいた絵はがきと同じ中門です。紅葉の時期ならもっと素敵なんでしょう。

 大乗閣です。

 遠くの比叡山が借景になっています。手前の衣笠山、双ヶ岡もきれいです。仁和寺の塔も確認できます。

 石伝いに進むと。苔のジュータンです。

 滴水庵は茶室の設えでしょうか。

 嵐峡展望台まで上がると、向こうの『大悲閣』から右下には保津峡が見えました。

 山の中腹にある大悲閣には、五色の幟が翻ります。

 月香からの見晴らしです。右から左まで、素晴らしい眺望です。

 大河内伝次郎記念館です。凄まじい形相の印象深い写真です。

 愛車、クライスラーと写るカッコよい姿もありました。

 久しぶりの抹茶です。小布施落雁とともに味わいました。

 心地よい風が吹き抜けるお抹茶席でした。

 紅葉したころにまたやって来たいです。

 『小倉山』を歩きました。保津峡を開削した角倉了以の銅像が立っていました。

 『大井川(大堰川)』に出ました。水が清らかでした。

 『渡月橋』のたもとにある名物茶屋の桜もちをみやげにしました。

 渡月橋の向こうに十三参りの『法綸寺』が見えました。

 【15:28】
 阪急嵐山近くまで戻ってきました。サギが西日を浴びていました。

 途中でバスに乗ったので、2回に分けてYAMAPを作動させました。