江戸時代の京都ツアーガイド、「京城勝覧」(貝原益軒)に沿った京巡りは第十二日です。『鳥羽を通り山崎にゆくみち』が記されています。
『下鳥羽』の説明に、『道の東がはに戀塚寺(れんちょじ)あり。源渡(みなもと・わたる)が妻の塚あり。是鳥羽の戀塚(こいづか)なりといふ』とあります。
北面武士、遠藤盛遠(もりとお、後の文覚)が自ら殺めてしまった恋する袈裟(けさ)の菩提を弔うために建立したと伝えられている寺です。
高校生の時に初めて読んだ「新・平家物語」(吉川英治)以来の懐かしい名前でした。
境内には、袈裟の塚と伝わる宝筐印塔があります。
盛遠が北面武士として警護にあたった鳥羽離宮の南殿跡です。
【2021/10/22 09:59】
目的地の鳥羽の辺りまでは、歩けない距離ではりません。実際に城南宮まで歩いたことがあります。ただし、きょうは自転車にしました。
久しぶりに乗る折り畳み自転車、DAHONです。タイヤは空気が抜けてぺちゃんこでした。
100均出身の空気入れでシューッ。労せずしてパンパンになりました。
西国街道を東へ走りました。
『山崎』を過ぎたところに山崎聖天に登る道があります。ここの鳥居を見ると、『観音寺』と書かれていました。「聖天さん」は通称です。
桂川にかかる宮前橋を渡ります。対岸は淀です。
『納所(のうそ)』の変則五差路です。東北に延びる一番狭い旧道は千本通です。
千本通は、平安時代の都の北の風葬地、蓮台野に死者を送る道に千本の卒塔婆を立てたことに由来するそうです。その道が京を南北に貫いて、ここまで延びているのです。
千本通は桂川の堤防に沿って北上します。
堤防の上には、嵐山から木津までを結ぶ自転車専用道があります。高速のロードバイクが行き交います。
清酒「月の桂」の増田徳兵衛商店です。延宝3(1675)年の創業。伏見では、最も古い歴史を持つ造り酒屋です。
軒下の大きな杉玉がかかります。
茅葺門の戀塚寺です。本堂は、最近の建立です。
袈裟御前を中心に、夫の源渡、それに文覚の木造が並びます。
寺の縁起が記されています。
袈裟御前は、源渡と結婚していました。
ある日、袈裟御前の前に一人の男性が現れます。遠藤盛遠という北面武士でした。袈裟御前の従姉妹です。
袈裟御前の美しさに盛遠は、一目惚れし、彼女の母に二人との間を取り持つように迫ります。
この盛遠の行動に困惑した袈裟御前は、「夫の源渡が寝ているところを襲って、亡きものにしてくれたら、あなたのもとに参ります」と盛遠に伝えます。
盛遠は、ある晩、源渡が寝ているところを襲います。源渡が寝ている布団をはいでみると、そこには動かなくなった袈裟御前が横たわっていました。
彼女は、夫の身代りになって死ぬことを選んだのです。
盛遠は、自分の行為の愚かさを恥じて出家し、袈裟御前の菩提を弔うために恋塚寺を建てました。
この出家した遠藤盛遠が、後に怪僧と呼ばれることになる文覚なのです。
(「京都観光旅行あれこれ」より)
「新・平家物語」では、第1巻の冒頭につかみどころとして登場する悲恋です。袈裟御前、新妻月夜、鬼影、貞操百花図、鳥獣戯画の章で綴られています。
戀塚は、上から見ると真北よりちょっと西を向いていることがわかります。
文覚が再興した高雄の神護寺の方向です。
戀塚寺
075-622-3724
京都市伏見区下鳥羽城ノ越町132
北に進むと「赤池」という交差点です。
文覚が血に染まった刃を洗って赤くなったから赤池という説もあります。でも京都市の説明は、「鉄分の多い地層」だったからと味気ないです。
白河院が造営した鳥羽離宮の南殿跡です。広々としています。
『小枝の橋 上鳥羽と下鳥羽の間に有。賀茂川のすえにかかれる橋なり』とある小枝橋。益軒の後、鳥羽伏見の戦い(戊辰戦争)の端緒の舞台となりました。
鳥羽離宮の碑です。『御庭の築山なり』と記された『秋の山』に立っています。
名神・京都南ICの北で鴨川を渡ります。
向こうにそびえる比叡山から2日前に、この辺りも見下ろしました。
『上鳥羽 戀塚あり里人は是を鳥羽の戀塚といふ~鯉を埋めし塚といへり』と記された上鳥羽の戀塚浄禅寺です。
境内に袈裟御前の首塚(恋塚)がありました。でも気づきませんでした。
「京の六地蔵めぐり」の一つ「鳥羽地蔵尊」として知られます。
戀塚浄禅寺
075-691-3831
京都市南区上鳥羽岩ノ本町93
久しぶりの自転車で疲れたので、京都地下鉄の竹田をゴールにしました。
新鮮野菜をよく買いに来る「じねんと市場」です。ちょっと気になりましたが、荷物になるので通り過ぎました。
【12:59】
竹田の駅前で自転車を折り畳みました。
輪行袋に収まった自転車です。こうすれば公共交通機関も利用できます。
近鉄より先に京都地下鉄がきたので、そちらに乗りました。京都でJRに乗り換えて帰宅しました。
平均速度は6.05kmと、ちょっと遅めに出ています。昼飯や休憩時間も含めているからです。自転車のスピードメーターは、平坦路では13キロあたりを指していることが多かったです。