会社の情報誌(電子版)に以下のような文章を書きました。これまでこのブログで書き連ねてきたなんばの「きょうの昼飯」の総括として、ほぼ原文のまま転載します。
なんばの「きょうの昼飯」
「きょうの昼飯」は05年夏、昼間の居場所が大阪・湊町の陽当たりのいい窓際になったオジサンが、新たな地で開拓した昼飯メニューです。弁当持参の日もあれば、社食(社員食堂)ですませることもあります。それでも目標1日1万歩を歩くには、ちょっと遠出も歓迎です。ハラの出っ張りを気にしながら、おいしいものを食べに行く、この矛盾した毎日のログです。
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こんなプロフィルとともにわたしのブログ(『「どたぐつ」をはいて…』=http://dot117.minibird.jp/wp/)に「きょうの昼飯」を書くようになって5年がたとうとしています。
最初の書き込みは、なんばグランド花月近くにあるうどん屋でした。吉本新喜劇の芸人のだれだったかが「肉うどんのうどん抜き」と頼んだのが始まりという「肉吸い」に、ミナミの味を感じました。周りの人に見られているのではないかと、緊張しながらデジカメを構えたのを覚えています。
梅田なら、会社を出たところにおいしいそば屋がありました。大阪駅前ビルの地下まで足を伸ばせばたいていの店はあって不自由はしませんでした。湊町に引っ越してきて困ったのは、どこで昼食を食べるかということでした。ネットで調べたりして初めての店に足を運び、知らないメニューを食べていると、いつの間にか未踏の店を制覇すること自体が楽しみになってしまいました。『「どたぐつ」をはいて…』といブログ・タイトル通り、あちこちへと歩くことは苦にはなりません。
都心の地下街やビルに入居している新しい飲食店は、大資本のチェーンなんかが多いです。味も似たり寄ったり。こんな店で食べていれば、平均点で間違いはありませんが、「食った!」という感激もあまりありません。
なんばでの昼飯の楽しみは、路面店にあります。商店街からはずれた裏通りで「食事処」と書かれた古びた看板や、「洋食」の文字が色あせたのれんなんかを見つけると、ゾクッとします。お世辞にもきれいとはいえない店内には、昭和の雰囲気が残ります。無口なおじちゃんが包丁を握り、愛想のよいおばちゃんの声が響く。これだけの舞台装置がそろえば、その昼飯がおいしくないはずはありません。
織田作之助が愛したカレー、池波正太郎が通ったかやくご飯、ここが発祥というオムライス…。どれも飾らない庶民の味です。いくらおいしくても、ン千円もするステーキや会席料理なんかとは無縁です。漱石に助っ人がいるなんてことは珍しいです。食事がすめば、「入れとくよ」と自ら500円玉をカウンターの1合升に放り込んでくる店も健在です。
古びた建物、ということは自宅兼用でテナント料が不要ということかもしれません。使い古した什器、ということは減価償却が終わっているのでしょう。ベテランのおじさんの腕は、マニュアル通りに調理するセントラル・キッチン食堂のバイト君より確かなはずです。
本社から徒歩15分というのが1時間の昼休みでの目安です。ずいぶん遠くまで行けるものです。道頓堀に黒門市場、木津市場、堀江もみんな圏内です。
正午を過ぎるとデジカメ片手に、いそいそと会社を出ます。いつも独りでお目当ての店に向かいます。偶然を頼りにさまようこともあります。テーブルに食事が並んでも、写真撮影という儀式が待ってます。全部そろえてパチリ。こちらからもパチリ。ひとくち食べてまたパチリ。だれに気兼ねすることもありません。
バーボン・グラス片手の風呂上がりには、ブログ作成という楽しみもあります。毎日、日記を書き続けるのと同じことなのでしょう。この5年間の私の生活記録は、その日に食べた昼飯にリンクしています。
これまでにブログに登場したのは800店(重複掲載含む)を超えてます。カウンターでカメラを構えていると「どたぐつさんですか?」と隣の女性に声をかけられたことがあります。「いつも楽しみにしてます」と編集局の女性記者におだてられ、『「どたぐつ」が喰う!』という夕刊連載(隔週木曜日)まで始めてしまいました。
入社後2年間の支局記者生活の後は、部署こそ違え梅田-湊町の本社に通勤する毎日でした。このほど大淀での勤務となりましたが、新たな地で、新たな気分で「きょうの昼飯」の探検も始めています。
こんにちは。当方は貴方様にご来店いただき こちらのブログにのせていただいた者でございます。いつもすばらしいお写真とコメントをROMさせていただいてます。当店は貴方様のお気にめさなかったらしく、批評はとても不愉快なものでした。当方が一番主張したいことは、報道というご職業にたずさわっていながら、なんの断りのなく写真を撮りネット上にアップするという貴方様の傲慢さです。頼んでもいないのに わざわざ住所など記載していただき 誠にありがた迷惑極まりない。ほんとご苦労様でございます。
匿名さま
誠に申し訳ない書き込みをしていたようで、おわび申し上げます。「おいしくなければ、書かない」を基本姿勢に書き連ねてきたつもりでしたが、配慮が足りなかった部分があったようです。
もうひとつは、これはあくまでわたしの個人の匿名ブログのつもりでした。職業が報道機関であったこととは無関係のつもりでしたが、いつの間にかあいまいになっていた部分もあるのかもしれません。
ご指摘の点を心にとどめて、このブログを続けていくことにいたします。