my camino=22日目 ファーマシアに飛び込む 

 緑色の十字の看板をあちこちで見ました。大都市では、日本のコンビニエンス・ストアのようにあたりまえに存在しています。ファーマシア。薬局です。スペインの人って、ずい分と薬が好きなんだと感心しました。
 日本のドラッグストアとは違って対面販売です。白い上着を着た薬剤師が待機していて、客はあれこれと相談します。ここでもお話し好きのスペイン人の面目躍如で、やりとりは延々と続きます。慌て者のわたしは、先客にしびれを切らして一度は逃げ出しました。
 ところが、そうも言っておれない事態に遭遇しました。レオンを前に、右足首がチクり、チクリと痛くなりました。レオンのオテルのベッドで、治療法をゆっくりとネット検索しました。そこで見つけたのが足首へのテーピングでした。YouTubeには、テープの使い方がていねいな画像で紹介されてました。
 意を決してファーマシアに向かいました。
 「Please give me a fix tape.」と痛い足首を指さしつつ、つたない英語で訴えました。応対してくれた薬剤師は、サポーターやらテープやらを5品ほど持ってきてくれました。そのなかからひと巻きのテープを取り上げて、「more wide type」と指を広げて頼むと、思い通りの太いテープを出してくれました。2ユーロほどでした。これが運動選手などがよく張っているテーピング用のテープかどうかはよくわかりませんでした。

 次の朝。足首にテープを巻いてみました。これで関節が固定されたようです。びっくりするほどの効果があり、歩行がぐっと楽になりました。さらに数日で、痛みはウソのように消えてしまいました。
 サリアを前にして、今度は反対側の左足が痛くなりました。右足には効いたテーピングも効果がありませんでした。持っていた湿布シートも最後の1枚となったので、ファーマシアに駆け込みました。「これと同じのちょうだい」と。薬剤師はシートを手に臭いをかいだり、同僚を呼んで「これ何だかわかるか?」とでも話し合っているようでした。結論は「ない」でした。スペインには湿布シートは存在しないという、わたしにとっては衝撃の事実が判明しました。
 帰国後、まだ痛かったので整形外科医に見てもらいました。レントゲンでは異常は見つからず、何らかの菌が足首の関節辺りで炎症を引き起こしているのだろうということでした。「外傷はなくても、過度の疲労で足先の水虫菌が活性化して炎症を起こすことだってありますよ」。指示された抗生物質を数日間、飲み続けていると、やがて炎症は収まり、痛みもひいていきました。
 抗生物質なら予備薬として持っていたのでした。消炎鎮痛剤のつもりで飲んでおれば、ちょっとは楽だったのかもしれません。でも素人にそんな知識はなく、宝の持ちぐされでした。