京の三十三食 一番 南座 松葉のにしんそば

 京都への通勤(通院)が始まりました。せめてもの楽しみは、新聞社勤務以来の外食です。わたしなりの三十三食を、西国三十三所巡礼になぞらえていきます。33回(33日)の放射線照射とともに完遂したいと思います。
 京都でも新型コロナウイルス感染症が爆発的に広がっています。行列のできる店や、感染症対策に不安を感じる店は敬遠して、京都育ちなのに行ったことがないといった店を巡ります。
 「発願の食」は、四条大橋たもとの南座角にある「総本家にしんそば 松葉」です。記憶の限りでは初入店です。
 「にしんそば(鰊しぐれごはん付)」(1925円)は、こんなきっかけでもなければ、味わうこともなかったでしょう。 

 京都のそばです。うどんもそうですが、ふにゃりと柔らかいです。それを出汁でいただきます。あたり前のようですが、その出汁が京の味です。昆布と鰹節からとられた雑味のない純粋なうまさです。
 ひと口すすると、薄味です。薬味のねぎをそえます。七味を振ります。ホロリと崩れるにしんからしみ出した脂が溶け込みます。お味は七変化します。

 甘さ控えめの分厚いにしんは、丼を横断するほどの大きさでした。
 さすがに暑かったです。汗をかきつつ出汁を飲みつくすと、お冷やを頼みました。

 ちょっと甘い鰊(にしん)しぐれが、温かいご飯いかけられています。漬物があれば、これだけで軽く一膳です。

 初めての味とはいえ、店頭のディスプレーからにしんそばのイメージは植え付けられていました。わが家で年越しそばをいただくときも、そばをにしんの中央にいく筋かをかけていました。
 ところが、きょうのそばは、にしんが尻尾だけを見せて、行儀よく並んだそばに隠れていました。

 いただいたしおりにヒントがありました。画像上は明治15年に二代目松野与三吉が発案したにしんそばです。にしんは埋まっています。下は「現在のにしんそば」です。ということは、現在からさらに先祖返りをしたということでしょうか。

 2階でいただきました。入店は一番乗りでした。やがてほぼ満席になりました。
 右下が四条通り、向こうが鴨川にかかる四条大橋です。

 古い暖簾や、祇園のきれいどころの団扇が飾られています。

 南座のすぐ横です。いつもは大勢の人だかりができています。

 南座では、「坂東玉三郎 特別舞踊公演」がかかっています。

 総本家にしんそば 松葉
 京都市東山区四条大橋東入ル川端町192
 075-561-1451

 肝心の放射線照射は、所要時間10分ほどで何事もなく終了しました。