TANNOY再会(1) 初恋のⅢLZ 

 TANNOY(タンノイ)のスピーカー、ⅢLZがわが家にやって来ました。わたし自身へのお年玉といったところです。
 手に入れたのは、ⅢLZの2代目で、MonitorGOLDといスピカーユニットが内蔵されています。1967~74年の約7年間、英国・TANNOYで製造され、発売されていました。わたしがオーディオに興味を抱いた学生時代から新聞社に就職した時代とオーバーラップします。
 剣豪作家の五味康祐氏が「西方の音」として絶賛した同じタンノイのオートグラフを「女王」とすれば、こちらはその一族の末端に位置するエントリー機でした。それでも当時の初任給1カ月分が吹っ飛ぶほどで、ちょっと手の届かない「初恋の君」でした。
 半世紀が過ぎて、容姿はそれなりになってましたが、やっと手に入れた喜びに包まれました。 

 今でも人気機種で、中古オーディオ店では、発売当初の2倍はするような値札がついています。
 ヤフオク(ヤフー・オークション)で、リーズナブルなのが出品されていたので、思い切って落札しました。KLMでスペイン往復チケットが買えるほどでしたが、そちらの予定はいつになってもたたないので乗り換えました。
 飛脚便が運んできてくれました。2個で25キロほど。ズシリと重たいです。プチプチで厳重に梱包してありました。

 「ネットに破れ、箱に傷あり」ということでしたが、予想したほど悪い品ではありませんでした。憧れのⅢLZとの対面に、ホッとした瞬間でした。

 エンブレムは輝きを失っていますが、まぎれもなくTANNOYです。いずれは磨いて、化粧をし直します。
 恥ずかしながらブランドのバッグや装飾品を、これみよがしに持ち歩いているおネエさんとまったく同じ心境です。

 裏面です。高音部を調整する2つのつまみと、コネクターがついています。古いコネクターで、細いケーブルしかはさまりません。

 シリアル(製造番号)が手書きされたタグが無造作にステップルで留められています。マニアにとっては、本物の証明として貴重な一品です。

 ⅢLZは元来はスピーカーユニットの名前で、2代目のユニットのは正式名称はタグに書かれているように「LSU/HF/3LZG/8U」といいます。
 これをタンノイ製の密閉型キャビネットに収めたものが通称のⅢLZとして人気を得ました。英国製のオリジナルの箱に入っているのがいい音がするといわれています。

 肝心の音です。最初にLPでチャイコフスキーの弦楽セレナーデを音出ししたときは、スカのような音にびっくりしました。こんなはずではなかったと。でも何枚かLPを聴き続けていると、音がこなれてきました。これなら磨けばなんとかなりそうと、一安心しました。
 今後の課題は多いです。
 ・ネットワークに使われているコンデンサーの検査、交換
 ・サランネットの補修、清掃。場合によっては張替え
 ・箱の補修、再塗装
 ・スピーカー・スタンドの製作
 することはたくさんあります。時間をかけて、ゆっくりと初恋の君と付き合っていきます。