my camino=33日目 巡礼巡礼路の「お接待」 

 リコンデの村が楽しみでした。前回の巡礼では、ここの休憩所の前に立てかけられていた黒板に日の丸とJAPANと書き込みました。なんだか誇らしかったのです。ルクセンブルク、ドイツ・・・。いろんな国旗が並んでいました。
 再びやってこれた懐かしい村でした。「あれ、黒板、なくなったのと?」とおばちゃんに聞くと、「あるよ」と部屋の中に連れて行ってくれました。そこで2度目の日の丸を描きました。
 満足してセルフサービスのコーヒーをいただきました。これがドナティーボでした。かたわらに箱が置かれていました。ここにしかるべき額のコインを「寄付」するのです。コーヒーという商品への対価ではなかったのです。
 カミーノのあちこちに、ドナティーボの休憩所はありました。ジュースを飲み、スイカをかじり、オレンジをいただきました。スーパーメルカド(スーパーマーケット)に行っても、スイカ一切れは買えません。コンビニの存在しないスペインでは、ありがたい存在でした。わたしはお世話になることはありませんでしたが、ドナティーボで1夜のベッドを提供してくれるアルベルゲも存在しました。
 それは営利を目的とはしていませんでした。ドナティーボの額も決まっていません。カネのない巡礼者は、そこから拝借することさえ許されているそうでした。 
 四国のお遍路には「お接待」という風習がありました。遍路道を歩き始めて間もないころでした。すれ違ったおばちゃんに、「何もないから、これで冷たいジュースでも買って飲んでください」と百円玉2枚を渡され、合掌までされたことがありました。どう対応すればいいのかわからず、どぎまぎしたことを覚えています。タコ焼きをごちそうになったり、食堂でうどんとともに食べたおにぎりが無料になったこともありました。自分は歩けなくても、お遍路さんをもてなすことで、自らもお大師さまとともに巡礼する功徳にあやかりたいという願いがこもっているのだそうです。
 ドナティーボもお接待も、巡礼者に対する心持ちは同じことだったのです。